夏とサビキと淡路島(ハードボイルド篇)

Ángel De ÁvilaによるPixabayからの画像

 

「案内を開始します…」

少し強い口調でナビ子が言った。

俺はおもむろにハンドルを握ると、

イグニッションキーを回して

エグゾーストノイズを響かせる。

ミッドナイトタウンを駆け抜けて、

めざすは夜明けの海さ。

KanenoriによるPixabayからの画像

 

ふと気づくと、

饒舌なナビ子が黙り込んでいる。

どうやら目的地周辺らしい。

俺はクルマを止めた。

時計に目をやると午前4時。

「まるは釣具」の開店時間だ。

気の良さそうなボーイが俺を迎えてくれる。

満面の笑みを浮かべて「ごゆっくりどうぞ」ときた。

とぼけた野郎だぜ、まったく。

はやる気持ちを抑え、

慣れたそぶりで俺はこう言ってやったのさ。

「青イソメと石ゴカイを適当にみつくろってくれ。

 生きのいいヤツを頼むぜ」

近ごろ流行のジグサビキも手に入れた。

心配ない、オーダーは完璧のはずだ。

Kevin PhillipsによるPixabayからの画像

 

淡路アイランドの数あるポイントの中から

洲本ハーバーを選んだのは、もちろん理由がある。

まず、広くてゆったりと釣りが楽しめること。

そして、駐車場に困らないこと。

最後に、清潔なトイレがあること。

この三つが、俺の出した条件さ。

悪いな、俺はトイレが近いんだ。

 

急ごう。

すぐに夜が明ける。

俺はヘッドライトを装着すると、

早速、準備に取りかかった。

潮の香りに軽い興奮を覚える。

なに、いつものことさ。



それで釣果はどうだったんだって?

ふふ、夜空の星屑がひとつさ。

sakkan

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